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ヘンリーⅢ

師走が近づいたある日のことでした。

「先生、年賀状を送らせてもらいますので、住所を教えてください。」とヘンリーさんが言ってこられました。
今のように個人情報がどうこうという時代でもなく、軽い気持ちではいはいと、差し出された手帳に、自宅の住所を記入いたしました。

H:電話番号も書いといてくださいや。

S:電話番号もですか?

H:何かの時に、電話せんならんかもしれませんさかいな。

S:あぁ、そうですか・・・スクールに電話してくださったらいいんですけど?

H:先生、授業中やったら申し訳ないので。

S:電話に出た者に伝えていただいたら、それでいいですよ。

H:まぁ、よろしいがな、ほれ、ここ、ここに電話番号、書いておいてください。お願いしますわ。

そこまで言われて断るのも、なんか悪い気がしましたので、気がすすまないながらも、電話番号を記入しました。

それから数日、12月の中頃だったでしょうか、仕事を終えて帰宅すると母が言いました。

母:今日、ヘンリーさんが来はったえ。

S:えっ?!なんで?!

母:お歳暮持って来はったんや。

S:えぇ~!そんなん、いただけませんって、断ってくれた?

母:せっかく来てくれはったのに、そんなこと言えるかいな。

S:えぇ~、かなんなぁ、もぉ。

母:せっかくやから、上がってもろて、お茶出しといたえ。1時間くらいしゃべって帰らはったわ。

S:もぉ、お母さん!!そこまでせんでもよろしい!!

母:何言うてるのん。あんたには、ええお相手やわ。あんじょうにお相手して、修行させてもらいなさい。

S:修行?何の修行やの?

母:忍耐力や。

S:・・・・

忍耐力が必要と、母も悟ったようでした。

当時は携帯電話など普及しておりませんでした。
あたしは親子電話の子機を、自分の部屋の枕元においていました。
ある朝、けたたましく電話のベルがなりました。
時計をみると5時半過ぎ。
何事だ~!と枕元にある受話器をとりました。

S:はい、もしもし。

H:先生、ヘンリーです。えらい朝からすんまへん。えらい事ですねん。

S:おはようございます。どうかされましたか?

H:ワタナベが死にましてん。

S:は?どなたが亡くなったんですか?お身内の方ですか?

H:身内同様のモンですねん。長年、一緒に会社で仕事してきましたんや。えらいことですねん。

S:・・・・そうですか・・・・それはお気の毒に・・・・

H:ほんで、先生、誠に申し訳ありませんが、あしたの授業とその次の授業と、休ませてもらうわけにはいきまへんやろか。

S:それは大変ですね。落ち着かはるまで、ゆっくり休んでください。

H:えらいすんまへん。ちゃんと勉強せなあかんのですけど、なんせ、あのワタナベが死によりましたんで、えらい事ですねん。

S:わかりました。では、授業に来られるようになったら、またお電話ください。

夢と現実の間をさまよいながら、受話器を元に戻しました。
階下から母の声がしました。

母:なんえぇ?こんな時間に、なんの電話えぇ?

S:ヘンリーさんや~

母:何があったんえぇ?

S:後で話すわ。もうちょっと寝る!

これも修行だと、お母さん、あなたは言うのですか? と問い正したくなる、早朝のできごとでした。
だけど、ヘンリーさんのションボリした姿が目に浮かび、次に会った時には何と言って元気づけてあげればいいのだろうかと悩みました。
なんだか、胸が痛くなった思い出です。
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2006-09

プロフィール

 

★さっち★

Author:★さっち★
京都のさっちでございます。
おなじみ「ピンクのぶた」!
幸せのおすそ分け、したりされたり・・・
という思いで、昔と同じ
【Glucksschewein】です。

 

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